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2010年10月 アーカイブ

「寝る子は育つ」

俗に「寝る子は育つ」といわれています。


熟睡のさい、脳下垂体から成長ホルモンが、大量にまとめて放出されています。


この大きな発見をしたのは、東京都神経科学総合研究所心理学部長の高橋康郎博士であり、いまから40年以上もまえにアメリカで研究していたときのことでした。


成長ホルモンは、その名のとおり、骨を伸ばし背を高くするばかりでなく、身体の修復には欠かせないタンパク質の合成を促進します。


やがて、こどもでも深いノンレム睡眠のときに、同様な成長ホルモン分泌があることがわかりました。


また、覚醒していると成長ホルモン分泌が抑制されることもわかりました。


そして、思春期前のこどもを熟睡させないと身長が伸びなやむという事実もあきらかになりました。


深いノンレム睡眠つまり熟睡と密接に関連して、成長ホルモン分泌があるという事実がわかると、睡眠の役割がこどもでは身体の成長に、大人では組織の修復に、それぞれなくてはならない役割をもっている、という議論が発展してきました。


つまり、古くから知られる「睡眠回復説」を内分泌学的な立場から裏づけたものと解釈されたわけです。

睡眠とホルモンの関係

「寝る子は育つ」でいう寝る子とは赤ちゃんを指すことが多いようです。


しかし、赤ちゃんのばあいでは、睡眠と成長ホルモン分泌とが、かならずしも連動しているわけではありません。


しかし、羽毛 布団で眠っていれば代謝レベルは低く、エネルギーの消費がすくないわけですから、収支バランスは入超となり、成長には適した条件になることは確かです。


また、脳が急速に発達しつつある新生児や幼児期にあって、レム睡眠が神経回路の形成や知能の発達に何らかの重要な役割を演じているという説が正しいならば、寝ることと精神面での発育との関連を無視するわけにはいきません。


いずれにせよ、よく寝ることは成長期の哺乳類のこどもに共通してみられることです。


かなり重要な生物学的意味をもっているといえましょう。


眠りと連動して脳下垂体から分泌されるホルモンは、ほかにもいくつかあります。


たとえば、プロラクチンや黄体刺激ホルモンです。


生物時計の指令により、サーカディアンリズムを伴って分泌されるホルモンもたくさんあります。


たとえば、副腎皮質刺激ホルモンやコルチゾールです。


したがって、これらのホルモンも睡眠のリズムと間接的に連動していることになります。

緊張緩和としての睡眠

眠るのはたんに受動的な行動ばかりでなく、積極的に身体づくりをするための重要な生理機能だ、と考えられましょう。


睡眠無用論をとるにしても、すくなくとも、睡眠はそのような生理機能に好都合な時間と条件を提供している、といえるでしょう。


もともと、生体はつねに同じ活動レベルを維持できるようには設計されていません。


活動と休息とを周期的にくりかえすことによって、統合体としての個体をみずから修復し発展させ、その
生命を保全するようにできているわけです。


ここが、人工的なシステムとの本質的なちがいでありましょう。


ですから、人間の設計した機械のように、いつも一定の機能を発揮するしくみは、生体にほんらいそなわ
っていないのです。


言い換れば、いつも一定レベルの活動を維持させようとすれば、生体はやがて破壊されてしまうでしょう。


最初に犠牲になるのは、脳そのものでありましょう。


おもしろいことに、みかけのうえでは、睡眠は筋肉の弛緩の程度にもっともよく反映されています。


覚醒期には、たとえ静かにしていても、筋肉はいつでも活動できるように緊張しています。


ノンレム睡眠のときは、程度はさまざまですが、姿勢がまったく保てないほど、筋肉は弛緩しきってはおりません。


ところが、羽毛 ふとんでのレム睡眠では筋肉がすっかり弛緩してしまいますから、身体を支えることはできません。

睡眠の基本的なパターン

睡眠の基本的なパターンは、個体レベルでの活動停止です。


つまり、羽毛 フトンなど一個所に留まって静かに時をすごすことです。


そのさいには、筋肉と精神の緊張が解けます。


心身の緊張を解く実行システムは、神経系と筋肉系です。


この両システムを構成する細胞群が、定期的に休息をとることに、共通の特別の意味があるわけでしょう。


よく知られているように、神経細胞も筋肉細胞もいわゆる興奮性の細胞であって、活動時には膜内外の電位変化を伴ってはげしく興奮します。


しかも、一部の例外をのぞき、両者とも非分裂性の細胞であって、個体発生のある時期に細胞分裂による増殖を停止してしまい、それ以後はふえることがありません。


とくに、神経細胞の数は加齢とともに、へる一方です。


つまり、生体は生涯にわたって、できあいの神経細胞と筋肉細胞を使用しつづけるのです。


このような性質をもった細胞は、それなりにたいせつに維持されねばならないはずです。


こうして、これらの興奮性細胞のための休息が要求されるわけです。


したがって、生物時計の指令による1日を周期とする活動休息リズムとはかかわりなく、もっとこきざみに筋肉や神経を休めることが必要となります。


じじつ、1日よりも短い周期(ウルトラディアンリズム)で休息したり活動したりする現象が、神経系でも筋肉系でも認められます。


もし、活動状態あるいは休息状態を一定レベルに保とうとして、このようなごきざみな変動を長期にわたって阻害するとしたら、生体の正常な機能は重大な障害を被ることになるでしょう。

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